土木と建築の違いは?年収・仕事内容・資格など比較 | 土木・建築の仕事との出会いを提供するメディア - アイゾメ
ノウハウ
作成日:2022.11.07 更新日:2022/11/02

土木と建築の違いは?年収・仕事内容・資格など比較

土木と建築の違いとは?

土木と建築は、建設業法で定められている建設業の業種でも明確に区分されています。では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

土木

自然災害など社会における課題や、橋、道路、鉄道といった社会生活を営むために必要な基盤を整備するのが「土木」です。いわゆる「インフラ」と呼ばれる建造物をつくるのは土木の範囲と考えて良いでしょう。

また、建築物をつくる前準備として地盤を整えるのも土木の範囲です。一般的に、土木の担当範囲は「地面の下」と言われています。

建築

建築基準法では「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること」が「建築」と定義されています。建築物とは、住宅、マンション、ビル、学校など、屋根と柱や壁があり、その中に「空間」のある建造物のことです。つまり、建築の担当範囲は「地面の上」と言えるでしょう。

日本の建設投資は、大きく土木投資と建築投資に分けられます。土木投資は政府、建築投資は民間によって行われることが多いため、一般的に建築需要のほうが景気の波を受けやすいと言うことができます。

土木の主な仕事

土木工事の仕事は、機械を使って作業する「機械士工業務」と、人力で行われる「士工業務」の2つに大きく分類されます。

機械士工業務で行うのは、ブルドーザーやショベルカーといった重機を操作する作業がメインです。具体的には、資材の運搬、造成、埋め立てなどが機械士工業務に当てはまります。

一方、士工業務では、土砂などの採掘、コンクリート施工など機械を使用するのが難しい作業を行います。肉体労働と思われがちですが、実際には高度な専門技術やスキルが求められることも多い仕事です。

これら2つを組み合わせて行われる土木工事について、代表的な5種類をご紹介します。

1.ダム建設工事

土砂流の流れを阻止するために渓谷などにつくられる「砂防ダム」や、水害を防ぐために河川の水量を調整する「治水ダム」などを建設するのが「ダム建設工事」です。工事用の道路を造成する作業から始まり、建設場所の土砂や岩をどかして基礎を作り、コンクリートを流し込んで躯体を建設する、非常に規模の大きな工事です。

2.トンネル工事

人や車が通る道路、水道・電線といったライフラインの設置をするための工事が「トンネル工事」です。機械や人力だけでなく、時にはダイナマイトを使って土砂や岩石を掘り取り、そこに「セグメント」と呼ばれるコンクリート製の構造物を組み立ててトンネルをつくっていきます。近年では自然災害や老朽化に備えるための整備工事も増加しているようです。

3.道路工事

アスファルトやコンクリートで地面を舗装し、人や車が安全に通行できる道路をつくるのが「道路工事」です。新しく道路をつくる「新設工事」のほか、道路の安全性を高める「改良工事」、老朽化した道路のメンテナンスを行う「維持・修繕工事」の3種類があります。

4.河川工事

大雨による河川の氾濫を防ぐために行われるのが「河川工事」です。河川工事には、河川の周りに堤防を設置する「堤防建設」や、河川の水が逆流しないよう水門を設置する「樋門工事」といった種類があります。

5.基礎工事

建物と地面のパイプとなる土台をつくるのが「基礎工事」です。基礎工事では、まず工事をする土地の地盤調査を行います。調査の結果、地盤が弱ければ「杭基礎」、しっかりと固い地盤であれば「直接基礎」という方法で工事を進めていきます。

直接基礎は、さらに「ベタ基礎」「布基礎」「独立基礎」の3種類に分かれており、建物の用途や種類に合わせて最適な方法が選択されます。たとえば、一般的な戸建住宅であれば底面を鉄筋コンクリートにするベタ基礎が採用されることが多いようです。

建築の主な仕事

実際に現場で建築物をつくるのはもちろん、建築物のデザインや設計なども建築の仕事です。ここでは、その主な仕事を5つご紹介します。

1.建築士

建築物の設計・工事監理を行うのが「建築士」です。主な仕事は設計業務で、クライアントに建築物のイメージをヒアリングし、外観や内装のデザインなどを図面に起こします。デザイン性だけでなく、法律に則って安全性なども考慮したうえでの設計が求められる、非常に専門性の高い仕事と言えます。

建築士になるには国家資格が必須です。建築士の資格には一級、二級、木造の3種類がありますが、一級建築士の資格を取得すれば工法や規模などの制限なくすべての建築物の設計・管理ができるようになるため、キャリアの幅を大きく広げられるでしょう。

2.CADオペレーター

コンピュータ上で設計や製図ができるツール「Computer Aided Design」(通称「CAD(キャド)」を使って図面を作成するのが「CADオペレーター」です。建築士が作成したラフ案や設計図をもとに、より詳しい図面を作図していきます。実務経験や実践的なスキルを持っていることが重要ですが、「建築CAD検定試験」といった資格取得を目指すのもおすすめです。

3.大工

建築士が作成した設計図通りに木材を加工し、柱や梁、天井を組み立てて実際に建築物をつくるのが「大工」です。正確に材料を加工するスキル、建材や建築技術に関する知識など、大工には高い専門性と技術が求められます。木造住宅の場合、その出来栄えは大工の腕次第と言っても過言ではないでしょう。

大工になるのに学歴や特別な資格は必要ありませんが、「木造建築物の組立て等作業主任者」「建築大工技能士」などの資格を取得してキャリアの幅を広げることもできるでしょう。

4.電気工事士

電気設備の設計・施工を行うのが「電気工事士」です。照明・コンセントの配線接続、分電盤の設置、監視カメラや火災報知設備の設置のほか、近年ではソーラーパネルの設置も手掛けることがあるようです。

国家資格である「第一種電気工事士」を取得すれば、マンションやビルなど大規模な建築物の工事が可能になります。5年以上の実務経験が必要な資格ですが、取得によって仕事の幅を広げることができるでしょう。

5.配管工

冷暖房や空調、給排水などの設備や、管を通して水・ガス・水蒸気を送る設備を設置する「管工事」を行うのが「配管工」です。電気工事同様、管工事は人々が使用する建築物をつくるのに欠かすことができません。そのため、配管工は建築業界にはなくてはならない存在です。

配管工として働くのに、必ずしも資格は必要ではありません。ただし、給水設備工事に携わる場合は国家資格である「給水装置工事主任技術者」を取得しておきましょう。給水設備工事の施工を行う会社は、自治体などの水道事業者から「指定給水装置工事事業者」の指定を受ける必要があり、条件として給水装置工事主任技術者の選任が定められています。そのため、給水装置工事主任技術者は水道関連の配管工として働くうえで必須の資格と言えるでしょう。

また、「管工事施工管理技士」を取得して現場責任者を目指す道もあります。

6.左官

建築物の壁や床の下地などをコテで塗り上げるのが「左官」の仕事です。手作業がほとんどで、コテの跡が建築物の雰囲気を左右することから、職人としての技術や経験、精密さが求められます。学歴や資格がなくても左官として働くことはできますが、技能レベルを証明するためにも「左官技能士」などの資格を取得するのもおすすめです。

土木と建築の施工管理の違いについて

現場の監督役として工事全体を管理するのが「施工管理」です。主に原価管理、工程管理、品質管理、安全管理を行い、土木と建築の両方において必要な仕事ですが、施工管理の国家資格である「施工管理技士」はそれぞれ種類が分かれています。ここでは、土木と建築の施工管理について違いや特徴をご説明します。

土木の施工管理の特徴

土木工事では、地面から下の工事やインフラ建設を行います。そのため、土木では土、水、コンクリート、鉄筋などの施工管理が求められるのが特徴です。

土木の施工管理は特別な資格がなくても携わることができますが、土木工事現場に配置される主任技術者や監理技術者になるには「土木施工管理技士」の資格取得が必須です。土木施工管理技士の資格には、現場の全体を指揮する「監理技術者」として認められる1級と、作業工程ごとの責任者である「主任技術者」として認められる2級の2種類があります。

建築の施工管理の特徴

建築工事では、地面の上の建築物をつくるのが中心です。そのため、コンクリートや鉄筋のほか、木造建築物、壁紙・塗装といった仕上げ部分の施工管理も必要になるのが土木との違いと言えるでしょう。

建築の施工管理においても「建築施工管理技士」の資格を取得することでキャリアの幅を広げられます。こちらも1級と2級に区別されており、その違いは土木施工管理技士の資格と同様です。

土木と建築のいずれも、1級を取得すると工事の規模に関係なく施工管理を行うことができます。試験は第1次検定(学科試験)と第2次検定(実地試験)に分かれており、第2次検定の合格率は土木が36.6%(※2)、建築が約36.0%(※3)と簡単に取得できる資格とは言えません。その分、今後の仕事の幅を広げるのに役立てられるので、取得に向けて挑戦する価値はあると言えるでしょう。

(※2)国土交通省の報道発表資料より(試験日:令和3年10月3日の合格率)
(※3)国土交通省の報道発表資料より(試験日:令和3年6月13日の合格率)

土木と建築の資格

土木でも建築でも、資格を取得することで自分のスキルや技能について証明することができ、キャリアアップにも活用することができます。ここでは、それぞれに関連する資格についてご紹介します。

土木の仕事で役立つ資格

・土木施工管理技士
・測量士
・コンクリート診断士
・RCCM
・車両系建設機械運転者
・大型自動車第一種運転免許

建築の仕事で役立つ資格

・建築施工管理技士
・建築士
・構造設計一級建築士
・建築設備士
・建築CAD検定
・移動式クレーン運転士
・インテリアコーディネーター

資格はもちろん重要ですが、実際に現場で作業スキルを培うことも忘れてはいけません。両方のバランスが取れたスペシャリストを目指しましょう。

土木・建築業界は「3K」?

「3K」とは、「きつい」「汚い」「危険」の頭文字をとって作られた略語です。肉体労働が多い、仕事上汚れる、怪我のリスクがあるといった理由から、土木と建築の業界も3Kと呼ばれてきました。

しかし現在では、3Kのネガティブなイメージを払拭すべくさまざまな取り組みが行われています。たとえば、国土交通省は「新3K」として「給与」「休暇」「希望」を掲げ、建設業を目指す人が増えるよう労働環境の整備を進めています。技術者の就業実績や資格を登録できる「CCUC(建設キャリアアップシステム)」の導入や、「週休2日対象工事」の推進もその一例です。

土木や建築は大変な仕事というイメージもありますが、人々の暮らしを支える大切な職業です。今後はルールなどの整備が進み、働きやすさの改善が期待できるでしょう。

まとめ

土木と建築は、それぞれつくるものの種類が違うことをご説明してきました。主に地面の下やインフラを担当するのが土木、地面の上を担当するのが建築です。どちらも人々の生活に欠かせない仕事であり、重要度に優劣を付けることはできません。

自分が何に携わりたいのか、どのような仕事がしたいのかによって、どちらの道に進むべきかを選択するのが良いかもしれません。

JOB SEARCH 土木・建築の仕事を探す